ワルテルと天使たちと小説家

理想の写真



 犬が自然に溶け込んだ風景写真。
 それを撮りたくていつも苦心している。

 ワルテルたちのポートレイトではない。ただの風景写真でもない。そこに犬がいる風景写真だ。

 ステイをかけて撮る写真はわたしの気持ちの中ではポートレイトに分類される。カムとコマンドをかけて走らせるのも実は、困る。ブログに載せるために無理矢理撮っているようなものだ。

 ステイでも走らせるのでも、そこにはわたしという人間の意思が絡んでいる。わたしの意思に従おうとしているワルテルたちは、風景に溶け込んではいないのだ。どこか、不自然だ。

 だからわたしは朝早く起きて散歩に行く。朝の光が素敵だからということもあるが、なにより、早朝はだれもいない。人も犬もいないのだ。だから、ワルテルたちのリードを外し、好き勝手に動き回らせる。

 わたしはといえば、その間、コマンドはいっさい出さない。露出と構図を決めたら、ただただファインダーを覗き、その時が来るのを待つ。
 ワルテルやソーラが自分たちの意思でファインダーの中に入ってくるのを待つ。

 一度もシャッターを切らない――切れない日もままある。気持ちのいいぐらいシャッターチャンスが目まぐるしくやって来る日もある。

 数日前のある朝、朝焼けが東の空を染めていた。
 ワルテルのリードを外し、露出を決め、構図を決め、カメラを構える。
 ワルテルはわたしの気持ちなどおかまいなしにパトロールに興じている。
 朝焼けの時間は短い。今日もシャッターを切らずに終わるのかと思っていたら、ワルテルがファインダーの中に入ってきた。
 実に自然で、身体に無駄な力が入っていない。風景にしっかり溶け込んでいる。わたしのコマンドではなく、ワルテル自身の意思で動いているからだ。

 シャッターを切った瞬間、満足の吐息がこぼれた。

 撮りたいものが撮れると、その日は気分がいい。
 ワルテルを呼び、大袈裟に褒めてやる。
 ワルテルははじめ、きょとんとしているが、やがて派手に尻尾を振りはじめる。
  1. 2010/12/12(日) 09:00:00|
  2. Dog
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軽井沢で犬とともに暮らしています。 Canon EOS 7Dが愛機。レンズはそこそこ。

walterb

Author:walterb
 かつては夜の繁華街の住人。
 今は田舎暮らし。
 ネオンライトも雨上がりの森も、同様に愛す。

 冬が好きなのです。

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