ワルテルと天使たちと小説家

ソーラの受難 2



 ワルテルのリードを母ちゃんが、ソーラのリードをわたしが持ってなんとか二頭を遠ざけた。
 ソーラのテンションはだだ下がりである。せっかく家族と再会できたのに、喜びに浸る暇もなかったのだ。
 ワルテルの診察が終わると、二頭を車に乗せた。ソーラはフリー、ワルテルはクレートの中だ。ワルテルはひんひん鳴き続けているが、ソーラは安心したのかすぐに眠りについた。

 だが、ソーラの安逸は車の中の5時間だけだった。
 家に着き、車から降りた途端、ワルテルはソーラの背中に顎を乗せる。そのまま両前足をソーラの腰に回し、へこへこに移行する算段なのだ。
 ソーラは逃げる。ワルテルが追いかける。ソーラが怒る。ワルテルは一旦引く。しかし、絶対に諦めない。

 少し前、犬舎のIさんが言っていた。「ソーラの拒絶の鳴き声は特別で、あれやられると大抵の雄犬は引いちゃうんですけどね」
 けどね、なのだ。その先がある。
「ワルテルは絶対に引かないですよね」
 ブラボー、ワルテル。おまえは雄犬の鏡だ。

 しかし、ワルテルが雄犬の鏡なのは、ソーラにとってはただの迷惑でしかない。
 散歩の時はわたしがコントロールするからソーラは無事だ。食事の時も、ワルテルにしつこく迫られることはない。
 だが、それ以外の時間、ワルテルは背後霊と化してソーラにぴったりと張りついている。
 脚をぴんと伸ばし、頭を高くかかげ、これまた高くかかげた尻尾をこれ見よがしに振る。
 隙あらばソーラのお尻の匂いを嗅ぎ、ソーラの背中に顎を乗せ、いつでもへこへこできるよう、万全の準備を整えている。

 ソーラはじとーっとした表情で耐えている。
 ときおり、わたしや母ちゃんに助けを求めるような視線を向けてくるが「自力でなんとかしなさい」と言われるだけなので、またじとーっとした顔つきに戻る。

11_1101_1.jpg

 自力でなんとかしろと言っても、狭い家の中だ。ソーラがワルテルから逃げることのできるスペースは限られている。
 なので、仕方なく、ソーラをひとり、寝室に入れてやる。ワルテルが入ってこないよう、ドアをきっちり閉めて。
 そこでソーラはほっと一息つき、眠りにつく。寝室のドアの前ではワルテルがしつこくしつこくうろついている。最強のストーカーだ。

 しかし、ワルテルは実に嬉しそうだ、楽しそうだ。ソーラの気持ちとは裏腹に、高揚しまくっている。

11_1101_4.jpg

 ソーラの受難の日々はいつまで続くのだろうか……




  1. 2011/11/04(金) 09:15:16|
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軽井沢で犬とともに暮らしています。 Canon EOS 7Dが愛機。レンズはそこそこ。

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Author:walterb
 かつては夜の繁華街の住人。
 今は田舎暮らし。
 ネオンライトも雨上がりの森も、同様に愛す。

 冬が好きなのです。

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