ワルテルと天使たちと小説家

往診



 ワルテルが大丈夫だった方の右後ろ脚を引きずって歩くようになった。
 食欲も限りなくゼロに近づいた。

 なので、先生に電話したら、その状態で車に乗せて移動するのは避けたいから往診しましょうと言ってくれた。

「でも、今回はぼくがワルテルの縄張りに行くわけだから、怒りまくると思うんですよ。だから、しっかりコントロールしてくださいね」

 電話を切るとき、先生は苦笑しながら言った。

 そう、ワルテルは先生が嫌いなのだ。
 毎週ちっくんされるし、嫌で嫌でしょうがないけど、普段は先生の縄張りにつれて行かれるので仕方なく我慢しているのだ。

 だけど、自分の縄張りじゃ好きにはさせないぞ。

 ワルテルがそう考えることは自明の理だ(苦笑)。

12_0726_3.jpg

 案の定、先生が来ると、ワルテルは吠えた。寝たまま、吠えまくった。
 立ち上がることができたなら、先生に飛びかかっていたと思う。
 やれやれ。

 検査をするため、父ちゃんがワルテルのお腹を抱えて立ち上がらせる。
 ワルテルは「ほひー、はひー。ふひー」とわけのわからないうなり声をあげる。
 先生に噛みつきたいのに、それができなくて半狂乱だ。

 そのうち諦めたのか、疲れたのか、ワルテルは静かになった。

「まだ目力があるし、これだけ吠えて暴れられるんだから、大丈夫。もうすぐ満月だからそれが影響してるかな。食べないのは、消化に余分なエネルギー使いたくないからだと思うよ。ぐったりしてるっていうよりは、なにかを待ってるって感じでしょ? 身体の回復を待ってるんだよね。水たくさん飲ませてあげて。自分で食べたいって意思表示するまでは、リンゴのすり下ろしとか、そういうのを少しずつ与えて」

 先生が帰った後も、ワルテルはしばらく挙動不審だった。

 なんであいつがぼくの縄張りに来たの? なんで? なんでー?

 母ちゃんがそんなワルテルを慰めていると、いつしか眠りについたようだ。

 一夜明けて、ワルテルの調子は相変わらずすぐれないが、顔つきを見ると、昨日よりはいくらかましらしい。
 水はがぶ飲みするが、母ちゃん手作りの人参とリンゴのジュースは無視。まだ食べていい状態ではなようだ。

 それでも、宅配屋がインタフォンを押したら、また寝たまま激しく吠えた。
 先生がまた来たとでも思ったのだろうか。

 いずれにせよ、ワルテルは自らの回復の時をじっと待っている。

12_0726_4.jpg



 そんな感じだ。
 


  1. 2012/08/02(木) 10:20:10|
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軽井沢で犬とともに暮らしています。 Canon EOS 7Dが愛機。レンズはそこそこ。

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Author:walterb
 かつては夜の繁華街の住人。
 今は田舎暮らし。
 ネオンライトも雨上がりの森も、同様に愛す。

 冬が好きなのです。

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