ワルテルと天使たちと小説家



 伊豆での夜、夢を見た。

 深い深い闇の底で父ちゃんはソーラを探している。

 ソーラ、ソーラ、ソーラ、どこにいるんだ、ソーラ、おれはここにいるぞ、ソーラ

 ソーラを呼びながら闇の中を動き回っていると、月が昇った。見事な満月だった。
 しかし、満月には見たこともない影が刻まれている。
 父ちゃんは目を凝らす。
 望遠レンズをズームさせるみたいに、月がどんどん大きくなっていく。

 月は月ではなく、窓になった。
 丸い天窓だ。
 そして、その窓の向こうにマージとワルテルとソーラが並んで、父ちゃんを見おろしていた。

 やつらの姿を確認した瞬間、父ちゃんの目から滝のように涙が溢れてきた。

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 マージとソーラは笑っていた。にっかにかの笑顔だ。
 ワルテルはちょっとふくれっ面。もっと遊んでたかったのに、とその顔が言っている。
 きっと、マージに無理矢理連れてこられたんだ。マージには頭があがらなかったからな。

 とにかく、マージとソーラはとびきりの笑顔だった。
 幸せそうだった。

「父さん、父さん、マージとワルテルがいるから、わたしはだいじょぶなの。心配しなくていいの。こっちで父さんと母さんとアイセを待ってるの。悲しむ代わりに、また別の子を幸せにしてあげてなの」

 ソーラがそう言ってるような気がした。

 そうか、マージとワルテルが一緒にいてくれるんなら安心だな、ソーラ。
 でも、父ちゃんは寂しいよ。戻って来いよ、ソーラ。

 そう思った瞬間、手品みたいに天窓が消えた。
 父ちゃんはまた、ひとり、暗闇の中に取り残された。




 わかったよ、ソーラ。
 また新しい子を迎えよう。おまえにしてやったように、愛し、慈しむよ。
 それでいいんだろう?
 そうして欲しいんだろう?
 必ず、おまえの願いにこたえるよ、ソーラ。


 目覚めると、胸を押し潰されそうだった悲しみが和らいでいた。
 寂しさは募る。しかし、悲しみに沈んでいても、ソーラは喜ばない。

 来年、新しい家族を迎えよう。

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  1. 2014/12/23(火) 10:00:07|
  2. Dog
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軽井沢で犬とともに暮らしています。 Canon EOS 7Dが愛機。レンズはそこそこ。

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 かつては夜の繁華街の住人。
 今は田舎暮らし。
 ネオンライトも雨上がりの森も、同様に愛す。

 冬が好きなのです。

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