ワルテルと天使たちと小説家

マージへの教え



「カム!」

 声をかけてもマンマイは顔を上げない。気になる匂いを必死に嗅いでいる。

「カム!!」

 声のオクターブを上げる。それでもマンマイは気づかない。

 苛々が募る。
 切れてしまいそうになる。


 そんな時は、マージ、おまえを思い出すようにしている。


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 覚えてるか、マージ?

 夜の代々木公園で、おまえのリードを外してやった。
 おまえはここぞとばかりに駆けだしていって、父ちゃんが呼んでも無視した。
 全然戻ってこなかった。
 父ちゃんは怒り心頭に発して、怒鳴り散らしていた。

 あの時、おまえは2歳だった。

 でも、5歳を過ぎたぐらいかな、おまえは父ちゃんのことを完璧に信用してくれるようになっていた。
 万が一のことがあるとまずいからやらなかったけど、父ちゃん、東京のど真ん中でおまえとノーリードで散歩する自信があった。

 おまえは絶対に父ちゃんのそばから離れない。
 それぐらい父ちゃんはおまえを信頼していたし、おまえも父ちゃんを信頼してくれていた。

 2歳の時とは大違いだった。

 だから、マンマイが父ちゃんのコマンドより、自分の興味を優先させても、できるだけ怒らないようにしている。

 だって、マンマイはまだ一歳半なんだ。
 同じ年だった時のおまえより、よっぽど扱いやすい。

 辛抱強く待っていれば、いずれ、マンマイは自分の興味より父ちゃんのコマンドを優先するようになる。



 おまえが教えてくれたんだ、マージ。




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 ソーラはほんとに気が利く子だった。
 アイセは二歳半まで犬舎の群れの仲間にばっちり教育されてからうちに来た。

 犬のボスとしてはとても楽な二頭だ。ワルテルはいろいろあったけどさ(苦笑)。

 そこに久々にやってきたパピーがマンマイだったから、父ちゃんはおまえを育てた時のことを思い出しながらマンマイに接している。
 おまえに教わったことを大切にしてる。

 父ちゃんを少しでもましなボスに育ててくれたのはおまえだもんな。

 おまえとマンマイは全然似ていない。
 でも、マンマイを見ているとおまえを思い出す。

 いつの日か、東京のど真ん中でマンマイとノーリードで散歩できる時が来るだろう。

 父ちゃんは辛抱強く待つ。

 一緒に過ごす年月が絆を深めてくれる。

 おまえが教えてくれた。




 今でもおまえのことが大好きだよ、マージ。


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 火曜日の更新はお休みします。




  1. 2016/05/23(月) 09:00:00|
  2. Dog
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軽井沢で犬とともに暮らしています。 Canon EOS 7Dが愛機。レンズはそこそこ。

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Author:walterb
 かつては夜の繁華街の住人。
 今は田舎暮らし。
 ネオンライトも雨上がりの森も、同様に愛す。

 冬が好きなのです。

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