ワルテルと天使たちと小説家

想い出ぼろぼろ



 連休最後の日曜日。
 母ちゃんがクローゼットの掃除をするというので、父ちゃんも援軍に駆り出された。

 クローゼットの奥に仕舞い込まれた段ボールを引っ張り出すと、表面に「マージ」と記されていた。


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 おそるおそる中を覗いてみると、マージの闘病や介護に使った品々が詰まっていた。

 タオルやら毛布やらハーネスやら。
 その中に、ガムテープで何度も補修を繰り返した靴があった。

 父ちゃん、思わず、その靴を手にとって胸にかき抱いた。



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 年を取って、後ろ脚を引きずって歩くようになってしまったマージ。
 癌に冒され、抗癌剤を処方され、その副作用で腎機能が落ち、免疫力が限りなくゼロに近くなってしまったマージ。
 アスファルトの上で後ろ脚を引きずって歩いたら怪我をする、そこから菌が入ったら、マージは耐えられない。

 だから、靴を履かせた。
 一回10分にも満たない散歩でも、靴はアスファルトに擦れてすぐにぼろぼろになるから、家に戻る度にガムテープで補修した。
 DIY系が超苦手な父ちゃんだけれど、必死で頭使って必死で補修したんだ。

 マージの靴。
 マージのために父ちゃんが補修し続けた靴。

 ワルテルの介護に使ったものは、ほとんど処分してしまった。残してあるのは、今後、アイセやマンマイが年取った時に使えそうなものだけ。
 父ちゃんも母ちゃんも、遺品に執着することはなくなった。

 でも、マージの介護用品が入った段ボールは、まだ執着してたときに詰めたんだな。
 そのまま軽井沢に持ってきて、クローゼットの奥に仕舞い込んで忘れていた。

 軽井沢に来たら、靴は必要なくなった。
 アスファルトじゃなくて、芝生の上を歩くことになったし、なにより、大自然の中で元気を取り戻したマージは足を引きずることなく
歩くようになったし、時には駆けた。
 そんなマージを見て、父ちゃんは移住を決めた。

 マージ、ありがとうな。
 おまえのおかげで父ちゃんはいいボスになれた。父ちゃんがボスとして頑張ってるから、おまえの後のワンコたちは安心して
幸せに暮らせるんだ。
 おまえのおかげで、ワルテルもソーラもアイセもマンマイも、大自然の中、駆けたり取っ組み合ったり、毎日毎日、生き生きとし
ていられるんだ。

 全部、おまえのおかげだ。
 愛してるよ。忘れたことはないよ。

 マージに感謝の気持ちを告げてから、父ちゃんは想い出の靴を、ゴミ袋の中にそっと置いた。

 大事なのは物じゃない。
 心だもんな、マージ。



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  1. 2017/05/08(月) 08:25:57|
  2. Dog
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軽井沢で犬とともに暮らしています。 Canon EOS 7Dが愛機。レンズはそこそこ。

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Author:walterb
 かつては夜の繁華街の住人。
 今は田舎暮らし。
 ネオンライトも雨上がりの森も、同様に愛す。

 冬が好きなのです。

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