ワルテルと天使たちと小説家

意味



 マージは、犬と暮らすというのはどういうことか、というのを父ちゃんに教えるために父ちゃんのところにやって来た。

 マージが来るまでの父ちゃんはただのぐうたらな飲兵衛で、明け方帰ってきては寝て、昼過ぎに起きて、少し仕事したら歌舞伎町に繰り出して飲む、という生活を続けていた。

 昔から大型犬と暮らしたかったが、それがどんな責任を伴うのかということはこれっぽっちも考えたことがなかった。

 縁あって、マージと暮らすようになって、父ちゃんの生活は激変した。
 夜型の生活はやめた。一般の人よりは遅いが、それでも早く起きるようになった。
 気がつけば軽井沢に住んでいる。

 マージが父ちゃんを変えたのだ。

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 ワルテルは、父ちゃんの悲しみを癒すためにやってきた。
 そして、マージが父ちゃんを変えたように、母ちゃんを変えるためにやって来た。

 母ちゃんがワルテルを飼おうと言い出したのだ。
 その頃、マージはよぼよぼのお婆ちゃんで、父ちゃんはマージに付きっきりでパピーの面倒を見ている余裕なんてないと反対した。
 でも母ちゃんは、マージがいなくなったら父ちゃんのペットロスはとんでもないことになる。もう一頭いたら、悲しみも癒されると言い張って、ワルテルを連れてきた。

 母ちゃんの言う通りだった。
 マージを失った父ちゃんは悲しみのどん底にいたけれど、ワルテルのご飯を作らねばならず、ワルテルと散歩に行かねばならず、ただそれだけのことでとても救われた。

 でも、ワルテルが我が家にやって来た最大の理由は、母ちゃんを変えることだったんだと思う。

 母ちゃんも父ちゃんに負けず劣らずの飲兵衛だ。遊び好きだ。
 東京生まれで東京育ちの母ちゃんは、軽井沢に肌が合わず、週に一度は東京へ行っていた。
 軽井沢は嫌だ嫌だと口癖のように呟いていた。

 でも、あれはワルテルが胃捻転で緊急入院したころからだろうか。
 母ちゃんが東京へ行く回数が激減した。軽井沢に越してきてよかったねえと言うようになった。
 ワルテルと一秒でも長く一緒にいられる生活を選んだのだ。
 父ちゃんがそうだったように、母ちゃんも劇的に変わった。

 ワルテルがいなくなった今でも、毎日ソーラのためのスープを文句ひとつ言わず作る。用があるとき以外は東京へは帰らない。

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 ソーラは父ちゃんがよりよい犬飼いになれるよう、我が家に来た。
 マージにしてやれなかったこと、ワルテルにしてやれなかったことを忘れずに、犬飼いとしてもっと強く、もっと正しくあれるよう、父ちゃんを指導しているのだ。

 これから我が家に来るワンコどもも同じ使命を担ってくるんだろう。

 そんなことを時々思う。


 どの家のどんなワンコも、その家にやって来た理由や目的を持っている。
 そう思うこと、ありませんか?

13_0131_9.jpg





  1. 2013/02/05(火) 10:11:52|
  2. Dog
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  4. | コメント:22
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コメント

思います、痛烈に。
  1. 2013/02/05(火) 10:43:09 |
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  3. こーすけ #UvSQHAFg
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そう思います

動物との触れあいで激変する生活。
その中で動物への責任を感じられる人間は生活が変わり、
感じられない人間は動物を捨てる。
私は1年半ほどまえに亡くした猫ちゃんのことが忘れられず、まだペットロス状態にいます。
父ちゃんのように次の一歩を踏み出せない。
でも生涯に一匹の猫の思い出と共に生きていくのも悪くはないかなと思っています。
犬がくれた新しい人生。
大切にしたいですね。
  1. 2013/02/05(火) 10:48:23 |
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  3. ももちゃんのママ #bBmFigmc
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  1. 2013/02/05(火) 11:15:30 |
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  3. #
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ただ純粋にいてくれる

私が物心ついて 初めてわんが我が家に来たのは小学生の時。
真っ白な秋田犬♪ 大きな身体に繊細な心・・そしてかしこかった。
歴代のわんたちとの生活の中で、ビビたる進歩ではあるけれども学び
それでも いまだに「あの時、精一杯だって想っていたけど まだまだ出来ることがあったな・・。」と反省して進む。
わんたちも にゃんたちも どんな時も ただ純粋にそこにいてくれる。
だから私も そばにいたいと思う。もし無力だと感じる時があっても。
  1. 2013/02/05(火) 11:21:41 |
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  3. おーじろう #-
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使命を帯びて、遣わされしもの・・・

それぞれの来歴には関係なく、ウチの子になる必然があったと思っています。
充分に役目を果たして旅立った子達は、いつまでも、私の宝物です。

さて、我が家の新顔は、どんな使命をもっているのでしょう。
ときどき悪魔になる天使ちゃん!
きっと、私を元気で長生きさせるためにやってきたのでしょう。
  1. 2013/02/05(火) 11:54:55 |
  2. URL |
  3. く~り #lu3YW49c
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なんだか~

読みながら鼻の奥がつんとしました。

  1. 2013/02/05(火) 17:07:55 |
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  3. 銀風 #mWt2sFS6
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あの子が虹の橋に旅立ってから、まもなく一年になります。
いまだにめそめそしている私を気遣ってか、時おり夢で会いに来てくれます。
目が開かないうちに捨てられて、我が家にやって来たわんこ。あの子は特別でした。
うちに来てくれて、ありがとうね。
  1. 2013/02/05(火) 18:12:23 |
  2. URL |
  3. 犬飼い見習い #-
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ほんとうに、なんてたくさんの物を置いていってくれたことか…
感謝しかありません
  1. 2013/02/05(火) 20:20:00 |
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  3. ムックババ #-
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父さんの仰る通りです。いつも動物達から
沢山の事を学びます。

そして、彼らはまっすぐに私達を愛して
くれます。命を懸けて愛してくれます。

こんなに愛しい存在、他に知りません。
  1. 2013/02/05(火) 22:37:15 |
  2. URL |
  3. 勘太-モモのママ #0YcJaO/Q
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思いますよ~

でも別れの辛さに打ち勝ち!!
三匹のワンとの別れ・・・
そして今も3匹♪
ただ、ただ今はいいけど自分の老いを考えるときもきます!!
置いてはいけない!!
そこが難しい所ですね~~~
  1. 2013/02/05(火) 22:50:00 |
  2. URL |
  3. ピカッとサリー #GCA3nAmE
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  1. 2013/02/05(火) 22:56:05 |
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  3. #
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  1. 2013/02/05(火) 23:29:09 |
  2. |
  3. #
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思います。

ワンコがきて生活のリズムが変わりました。そしてご近所のワンコ仲間とその飼い主仲間のつながりができ、ワンコが旅立って、また生活がかわり、でもワンコの思い出を語れる人のつながりは残っています。ありがとう我が家にきてくれて。もっといい飼い主になりたかったな。
  1. 2013/02/05(火) 23:40:47 |
  2. URL |
  3. オレオ父 #-
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  1. 2013/02/06(水) 00:57:43 |
  2. |
  3. #
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あります!

私も犬達や猫達に教えてもらっていることが多いです。

本当に…
  1. 2013/02/06(水) 03:28:23 |
  2. URL |
  3. asa #-
  4. [ 編集 ]

使命

ペット(あまりこの言葉で表現したくはないけど)は、飼い主に足りないもの、補うべきものを教えるために舞い降りて、その使命が終わるとまた戻っていくのだというのを、何かの本で読んだことがあります。

明日は、私のパートナー犬の命日。
あの日も今日のように、関東では珍しくたくさんの雪が降った日でした。
火葬をしている煙が、シンシンと降る雪の中を静かに上がっていったあの空を思い出します。

今の私があるのは、そのタローのおかげ。

「マージ」という書き出しで始まったブログの文章を目にして不思議な感覚でした。
というのも、今頃と言われそうですが(苦笑)、「走ろうぜ、マージ」を読んでいたところです。

私は天邪鬼的なところがあり、動物は好きでも、人気動物ブログというものに関して以前はあまり興味がなく、実は去年の12月に何かの検索ワードで「富士丸な日々」を目にして、「そういえばこういうワンコがいたな、今はどうしているんだろ」と軽い気持ちでアクセスしたところ、穴澤父ちゃんの悲痛だった気持ちに触れ、その後、ブログの内容を全て読破して、馳さんのことやこちらのブログを知りました。
そして、今「走ろうぜ、マージ」なのです。

マージや幼い頃のワルテルのことが書いてある本と、こちらのブログを併読していると、なんだかとても不思議な感覚に陥ります。

私の本棚に、また素敵な一冊が増えました。
馳さん、ありがとうございます。

これからもブログはいつも楽しみに読ませていただきますネ。




  1. 2013/02/06(水) 10:40:32 |
  2. URL |
  3. yukari #5hiobRrU
  4. [ 編集 ]

まさに、そとおりですね。
ワンコを知らない人は、手間がかかとか、お金がかかるとか言いますが、そういうレベルじゃないんですね。
ワンコの存在が、飼い主を育ててくれて、助けてくれす。
ワンコの純粋で、まっすぐな眼差しが、すべてを物語っていますね。
感謝です。
家の子になってくれて、ありがとう。
  1. 2013/02/06(水) 12:49:05 |
  2. URL |
  3. 二胡ママ #-
  4. [ 編集 ]

実感

 娘夫婦が知人のいない軽井沢に転居してしばらくは、主婦だった娘は、夫以外に会話する人はいませんでした。それがジージを迎え入れてからは、ドッグランからの繋がりで多くの方に出会い、ずいぶんと幸せになっていきました。
 我が家の幸福の使者(犬)です。、
  1. 2013/02/06(水) 13:26:25 |
  2. URL |
  3. ジージばば #-
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  1. 2013/02/06(水) 22:39:34 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集 ]

あります 涙で文字が読めなくなりました。
  1. 2013/02/07(木) 12:43:52 |
  2. URL |
  3. チバ #kjt1HV.A
  4. [ 編集 ]

そう思います。

たくさんのことを学ばせ、感じさせ、考えさせ、成長させてくれています。癒しも確かに頂いているけど、それよりやはり飼い主として、日々自分と向き合わなければ、愛犬はこたえてくれません。ただ時に、飼い主の不運を愛犬が引き受けちゃってるのではないか、と感じることがあります。ただただのんびり穏やかに過ごしてくれればいいのに、いつでも愛犬は家族のために尽くそうとしますね。
  1. 2013/02/07(木) 15:02:58 |
  2. URL |
  3. りんこ #-
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  1. 2013/02/08(金) 22:31:21 |
  2. |
  3. #
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軽井沢で犬とともに暮らしています。 Canon EOS 7Dが愛機。レンズはそこそこ。

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Author:walterb
 かつては夜の繁華街の住人。
 今は田舎暮らし。
 ネオンライトも雨上がりの森も、同様に愛す。

 冬が好きなのです。

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